Hogan Lovells 2024 Election Impact and Congressional Outlook Report
Hogan Lovells’ U.S. + German Patent Update reports on recent patent news and cases from the United States and Germany, and is available in English, Korean, and Japanese.
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ドイツ特許最新情報
米国特許最新情報
現在、ドイツでは、「訴訟差止命令」と呼ばれる概念が初めて実際に起ころうとしている。米国と英国では、訴訟差止命令は十分に確立された手段であり、これによって出願人の要請に応じて外国の裁判所での手続を禁止することができる。
ミュンヘン第一地方裁判所は、その最近の判決で、ドイツ初の判決として自らがすでに下していた、米国の裁判所による訴訟差止命令に対抗する差止命令を確認した。この事から、この差止命令は「訴訟差止命令の差止命令」と呼ばれている。
この命令の背景にあるのは、電気通信分野の標準必須特許(SEP)を巡りドイツの裁判所で提起された特許訴訟である。被告のサプライヤーであり、ドイツにおける訴訟手続きの訴訟参加人の1社でもある会社が、SEPのFRAND(公平、妥当、かつ差別のない)ライセンスを取得するため、SEPの保有者を相手取って米国のカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所で訴訟を提起した。米国におけるこの訴訟手続きの一環として、この訴訟参加人は、ドイツにおける特許侵害訴訟手続きを停止させるための訴訟差止命令を下すよう、米国の裁判所に申し立てた。
米国の裁判所がそのような訴訟差止命令を下せるようになる前に、ミュンヘン地方裁判所は2019年7月、SEP保有者の要請を受けて仮差止命令を下し、訴訟参加人に対し、訴訟差止命令を求めるのを禁じ、またはこの求めを取り下げるよう義務付けた。同地方裁判所はこの理由として、訴訟差止命令は、SEP保有者の知的財産を保護する権利および法の正当な手続きを妨げるものであると述べた。米国で出された訴訟差止命令はドイツでは執行できず、従ってSEP保有者がドイツにおいて特許侵害訴訟を追求することは直接には妨げられないとしても、間接的には妨げられることになる。すなわち、米国での厳しい経済的制裁を恐れるあまり、SEP保有者がその訴訟差止命令に服従し、したがって自らの特許を効力ある形で権利行使できなくなることがどうしても予期されるからである。これによって、すべての者が制限を受けることなく申立てを行えるようにしなければならないという、法の正当な手続きが危険にさらされることになる。この、いわゆる訴訟差止命令の差止命令の結果として、2019年9月初旬、訴訟参加人は米国での訴訟差止命令を求める自らの申立てを取り下げることとなった。
一方訴訟参加人は、この決定を不服としてミュンヘン地方高等裁判所に控訴した。特に、この命令の発布には矛盾があると主張している。すなわち、裁判所自身が訴訟差止命令を出しながら、同命令がドイツ法の下で認められないと裁判所が判断しているという主張だ。同高等裁判所は2019年12月12日、第一審での判決を支持した。その理由はまだ公開されていない。
寄稿者: Dr. Steffen SteiningerおよびDr. Daniel Kaneko
ドイツ連邦最高裁判所は、最近下した「アリロクマブ(Alirocumab)」判決において、公共の利益の考慮という理由で特許の強制実施権を求める者がこれを得るために満たすべき条件は何かという問題を取り扱う必要があった。本事件において、同裁判所は、実施権請求者に強制実施権を与えず、当該請求者は真摯な努力を十分に行わず、公共の利益の根拠を証明できなかったと判断した。
本事件において、申立人はアリロクマブ(Alirocumab)物質を含有する「Praluent」という医薬品をドイツで販売している。特許権者は、特許侵害を理由に申立人を訴えた。申立人は、差止めによる救済を回避するために、強制実施権付与の仮処分を要請したが、連邦特許裁判所はこれを却下。申立人は上告したが連邦最高裁判所はこの却下を支持した。
ドイツ特許法第24条によると、強制実施権を得るためには、これを求める者が特許権者から実施権を得ようとして合理的な期間努力をしたものの成功しなかったこと、および強制実施権の付与を正当化する公共の利益があるという根拠が必要である。
1. 実施権取得に向けて努力したが成功しなかった
強制実施権を求める申立人が、特許権者から実施権を得るべく、一般的に認められる合理的な条件で充分に努力してきたか否かという点は、具体的な個別事件の状況を考慮に入れて検討されなければならない。実施権請求者がどの程度、またはどのくらい長く、合理的かつ通常の条件に基づき実施権を求めなければならないかという点は、特許権者の反応にも依存する。裁判所は、原則として、発明をそのまま利用することについて特許権者が同意を拒否した場合、それ以上の努力は求められないと述べた。しかし、ドイツ連邦最高裁判所は、特許権者が、原則として実施権を与えないと明言した場合はこれがあてはまらないとしながらも、例外的な状況においてはこれを考慮すると判示した。この場合、実施権請求者はさらに努力を重ねる必要があった。本件において実施権請求者は、この要件を満たしていなかった。さらに裁判所は、2%という低い実施権料率しか提示されていないと批判し、実施権の問い合わせ全体が「間際になってやっと提示された」と判断した。
2. 強制実施権の付与における公共の利益
当判決においてドイツ最高裁判所は、公共の利益をもたらすという点について実施権請求者が超えなければならないハードルが高いことを再度確認した。結審した判例法によると、基本的に、実施権請求者による特許の利用に関する公共の利益が正当化できる状況は、例外的でなければならない。強制実施権によって、特許権者の排他的権利が消滅するからである。また、挙証責任は実施権請求者が負い、特許が付与された発明が適用される製品によって、すでに市販されているその他の医薬品には無い、大きな治療効果が新たに生じることを証明しなければならない。この点について最高裁判所は、主張された特性が当該特許製品に確かにあることの証明が必要のみならず、市販されている他の医薬品にはこの属性がないことも証明しなければならないと強調した。実施権請求者はこのデータを入手できないことが多いため、この証明は通常は困難である。
ドイツ特許法が強制実施権のメカニズムについて定めて久しいが、強制実施権は、ドイツの特許利用者にとっては現実的な選択肢というより理論上のものであると考えられてきた。2017年のラルテグラビル(Raltegravir)判決(ドイツ連邦最高裁判所、X ZB 2/17)によって初めてこれが変わり、特に、医薬品に関する事件においては強制実施権の付与が現実的な選択肢となった。この判決によって、強制実施権の可能性が単に理論上のものではないことを、ドイツ連邦最高裁判所が実例をもって示した。アリロクマブ判決によって、最高裁判所は今、この判例法をさらに補足し、強制実施権付与のハードルが依然として高いことを明確にしている。特に、実施権請求者は積極的な姿勢で真剣に努力しなければならない。たとえ特許権者が実施権を付与したくないと見られる場合であっても然りである。
寄稿者: Dr. Steffen SteiningerおよびKatharina Bickel
連邦最高裁判所は、最近の判決で、先使用に関する私権の範囲と限度について判示した。この判決において同裁判所は、デュッセルドルフ地方高等裁判所の判決(I-15 U 49/16 - 無線システム用保護カバー)を支持した。この判決については、弊社の2018年ニュースレターで報告している。連邦最高裁判所は、デュッセルドルフ地方高等裁判所が確立した、許容可能な先使用を決定する枠組みを確認した。さらに、先使用権に関する一定の限度も定めている。この判決において注目すべき点は、連邦最高裁判所が、論争の的になっている問題に対する指針を提供したことである。その問題とは、ある特許の優先日より前に、その特許の発明の必須部分(ただしその全体ではない)を実施した者には、優先日の後にその発明全体を実施する権利があるか、またそれはどういう場合か、そして仮に権利がある場合、その者は、この権利を第三者(とりわけ、顧客)に付与できるかという点である。
先使用に関する私権は、ドイツ特許法第12条で規定されている。この規則に従い、ある特許の優先日時点ですでにその発明をドイツで使用(製造、販売の申し込み、市販等)を始めていた者、または利用のために必要な準備をしていた者に対して、その特許は効力を持たない。その者に対しては、たとえ第三者が当該発明に関する特許を出願した後でも、当該発明を自らの事業の必要のために利用する権利が与えられる。
本件において、被告は、原告の欧州特許の範囲内とされた無線システム用保護カバーを生産したことによって特許を侵害したとして訴えられていた。被告は先使用権を主張する。すなわち、主張された特許の優先日以前で製品全体は製造していなかったものの、主張された発明に必須な部品(いわゆる、「無線ドーム」)はすでに製造していたと主張した。デュッセルドルフ地方裁判所は先使用権を否定し、単に部品を製造していただけでは、当該特許の間接的な使用に過ぎず、従い当該特許の直接的または完全な使用(すなわち、発明全体の使用)を正当化するに充分なものではないと判示した。しかし、控訴審においてデュッセルドルフ地方高等裁判所はこの判決を覆し、間接的な先使用であっても、その部品が、当該特許に従ってしか技術的かつ経済的に意味のある方法で使用できないのであれば、例外的に、直接的使用に対する権利に及ぶ場合があると決定した。この一連の考え方によって、間接的な先使用者は、自らの既存顧客およびあらゆる第三者の両方に対して当該発明の提供を申し入れ、かつ実際に提供でき、これによってすべての顧客および第三者は当該発明を直接使用できる。本件はこの状況に該当するため、被告は自らの先使用権を拠りどころにできるとした。連邦最高裁判所はこの基本的考え方を是認している。
この判決で、最大の論争点の一つであった問題、すなわち発明がそれ以前に間接的に使用されていた場合、先使用に関する私権がどこまで及ぶのかという問いについて明らかになった。この判決から理解できるのは、間接的な先使用(すなわち、部品のみの使用)は基本的にはその発明の直接的使用(すなわち発明全体の使用)を正当化するものではないということである。ただし、従前に使用されていた部品が、当該特許に従ってしか技術的かつ経済的に意味のある方法で使用できないのであれば、例外となる。連邦最高裁判所が今後この規則に対するさらなる例外を確立するか、今後さらに注視する必要がある。
寄稿者: Dr. Steffen SteiningerおよびDr. Teresa Christof
米国特許商標庁(USPTO)は、長い間、特許法の規定を、USPTOが関与する訴訟に関連する「すべての費用」を支払うよう訴訟当事者に義務付けるものであると解釈してきた。だが、最高裁判所は、全員一致の判決としてこの解釈を覆し、すべての費用を自動的に支払うよう訴訟当事者に強制するのは憲法に違反すると判断した。
USPTOからの最終拒絶に直面したとき、特許出願人にはいくつかの選択肢がある。すなわち、(1)最終拒絶について連邦巡回控訴裁判所に控訴するか、(2)USPTOを相手取って連邦地方裁判所で訴訟を提起するかである。特許法には出願人が連邦地方裁判所で訴訟を提起しようとする場合について規定があり、出願人は、自らが勝訴したか否かにかかわらず、当該手続きに関する「すべての費用」を支払わなければならないとされている。USPTOは以前、この規定は、弁護士費用を含め、USPTOに発生する文字通りあらゆる費用を対象にするものと解釈していた。ここに至り、最高裁判所は、この解釈が間違っていると述べている。
最高裁の判断は、USPTOのこの解釈が、弁護士費用は訴訟当事者双方がそれぞれ負担するという長年の考え方(ただし、費用転嫁に関する制定法および制裁措置など、制定法による明確な別段の規定がある場合は除く)、いわゆるアメリカンルールに違反するものであると判断した。また、「弁護士費用を相手方当事者に負担させるものとしてその状況において[特許法を]解釈することは、弁護士費用の転嫁について、様々な背景を持った訴訟の中で長年守られてきた理念から根本的に乖離するものである」と説明している。結論として同裁判所は、「単純に言って、制定法で一般的に使用される場合、『費用』という用語だけで、[費用の転嫁を認めない]アメリカンルールの前提を覆して弁護士費用を転嫁することが十分な明瞭性を以って許されるとは、決して考えられていない」と締めくくっている。
出願人が最終拒絶に対して異議を申し立てる際に地方裁判所に控訴するのは、比較的まれである。これは、両当事者の費用をすべて支払わなければならないことで、出願人がこの方法による控訴の選択肢を思い留まってきた可能性がある。今、最高裁判所がこの規則を無効としたことで、今後、地方裁判所での控訴手続きを求める出願人が増えてくるか、関心が持てるところである。
寄稿者: Joe RaffettoおよびCorey Leggett
連邦最高裁判所は、当事者系レビューの申立ての適時性が控訴可能な問題であるか、近日中に決定する。本件において、PTABは特許を無効にする最終書面決定を下している。連邦巡回控訴裁判所は、請求の実体に関する控訴審でこの最終書面決定を破棄した。その理由は、最初のIPR申立書の提出時期が遅く、従い消滅時効が成立していたと判断したことにある。特許法には広義にとれる文言があり、これによってIPR開始決定に対する控訴が禁じられていると十分主張できるにもかかわらず、この決定によって、最終書面決定について控訴する際にIPR申立ての適時性について争えるという門戸が特許権者に開かれた。申立てが適時に行われたか否か、という点は、本質的に、IPRを開始するにあたりPTABが決定すべき入り口の問題である。従い、IPR申立ての適時性をめぐる控訴での主張点は、当然、開始決定に対する控訴ということになる。最高裁判所は、この問題について、今月初めに口頭弁論を行っている。
実務上、IPR申立てが適時に行われたかという問いは、その開始時点で決定される。ひとたび開始の決定が下された以上は、消滅時効の問題は最終的に解決されたと考え、控訴を含む開始後手続きでは、請求の実体、すなわちすでに開始された無効審判の根拠が焦点になると考えられていた。口頭弁論において、一部の判事は、期限の規則に違反しているという理由だけで無効性の決定を破棄することが果たして司法制度上効率的かつ適切であるか疑問を呈した。申立てに消滅時効が成立しているという理由で特許無効の決定を破棄することについて、ある判事は、「請求の実体に関する決定を破棄にすることには、何か不穏当なものがある」と述べる一方、別の判事は「また振り出しに戻るというのは、少し馬鹿げている」と述べている。
他の判事らは、控訴審がないことについて懸念を抱いているように見受けられた。とりわけある判事は「司法による審査が当然とされていること」に注目し、法律上の問題に関するPTABの決定だけが、控訴裁判所の審判を受ける他のあらゆる事象から隔離されていることに対して幾ばくかの疑念を表明した。事実、その判事は、1年という消滅時効の問題に関する決定を含め、PTABによる法律上の決定に対する控訴審が許されないというのは「異常である」とまで言い切っている。
決定は、2020年初めに下される見込みである。
寄稿者: Joe RaffettoおよびCorey Leggett
連邦巡回裁判所は、最近の判決において、PTABによる判事の任命方法が憲法違反と判断した。本件は、通常ある状況下で同裁判所に控訴されていたものであった。すなわち、異議申立てを受けた特許が最終書面決定によって無効と決定されたところ、特許権者が通常の方法で控訴したものである。しかし、本件独特の展開を見せたのは、最終書面決定の取り消しを求めて特許権者が挙げた理由が、本件を担当するPTABの判事の任命手続きが憲法違反ということであった。同裁判所はこれを支持している。
米国憲法の「任命条項」に基づき、政府機関(米国特許商標庁もそうである)の「主たる」官吏は大統領が指名し上院がこれを承認しなければならない。一方、同条項は、「下級」官吏については、それぞれの政府機関の長が任命することを認めている。本事件で、PTABの判事が「主たる」官吏なのか「下級」官吏なのかという点が注目を浴びることとなった。連邦巡回控訴裁判所が指摘したのは、重要な最終決定が米国特許庁の代理としてPTABの判事によって下される(時には、特許権の取り消しを行うなど)こと、しかも、判事らが最小限の監督しか受けてないことであった。PTABの監督機関は先例意見パネルのみであり、このパネルはPTABによる決定をすべて審理するわけではなく、一部しか行わない。同裁判所は、実質的な監督手続きが特許庁にないことから、PTABの判事らが「主たる」官吏であると判断した。従い、PTABの判事らが大統領による指名と上院による承認を受けていないため、連邦巡回控訴裁判所は、本件において任命条項に対する違反があると判断した。
その結果、連邦巡回控訴裁判所は、本件において、PTABが下した最終書面決定を無効とするよう命じた。ただ、この判決だけに留めることは同裁判所もできなかった。というのも、任命条項に基づいて任命されたPTABの判事が皆無であることから、今後同じ根拠で異議申立てが繰り返し起きるのを防ぐための救済措置を設ける必要があったからだ。この問題に対処するため、同裁判所は、PTABの判事がその上級職によって容易に解任される事を防ぐ特許法の条項が無効であると宣言した。これによって、特許庁に対し、その判事らを解任できる、より広範な権限が実質的に与えられた。なぜこれを行ったかについて連邦巡回控訴裁判所は、この権限を付与することでPTABの判事らは「下級」官吏になり、従い任命条項を遵守している状態になると説明した。
寄稿者: Joe RaffettoおよびCorey Leggett
Authored by Katharina Bickel, Dr. Teresa Christof, Dr. Daniel Kaneko, Corey Leggett, Joe Raffetto, Steffen Steininger
Editor: Michael Kosuge